緑内障手術とは

点眼による治療やレーザー治療でも眼圧が低下しない場合や、視野が狭くなっていく場合に手術を行います。

期待できる効果

眼圧の低下とそれに伴う視野症状の進行抑制

手術によって眼圧は低下しますが、失った視野を取り戻せるわけではありませんので「患者さまお一人お一人に適したタイミングで手術を行うこと」が非常に重要です。手術の方法によって眼圧の下がり方や術後の対応、合併症のリスクが異なりますので時期だけでなく、その方の状態に合った手術を選択することも大切です。

手術の種類

眼圧を下げる緑内障手術は以下のようなものがあります。
緑内障以外に白内障も進行している場合は白内障手術を行うことで房水の通り道である隅角が広くなり、眼圧の低下が期待できるため白内障手術を先に行うこともあります。


iStent

白内障手術と同時に行う緑内障手術で、2018年に保険適応となった比較的新しい手術です。この手術は線維柱帯というフィルター部分にiStentと呼ばれる金属製の小さな管を入れる手術です。

期待できる効果

この管を入れることで房水の排出が促され眼圧が低下します。これまでの症例でほとんどの方が手術翌日には眼圧の低下が確認できていますので、手術翌日からは点眼治療を一旦中断し、手術でどの程度眼圧が低下したか確認をしてから点眼の再開を判断します。

特徴

白内障手術と同時に実施できること、他の緑内障手術に比べて侵襲(身体へのダメージ)が少ない点が最大の特徴です。ステントを挿入するシュレム管には血液が流れているため出血は起こりますが、他の手術に比べて出血量が少なく、ほとんどの方が翌日には手術中の出血が吸収されます。

眼圧の低下量は他の手術より小さくなりますので大きく眼圧を低下させなければいけない場合は他の手術を選択します。


線維柱帯切開術
(トラベクロトミー)

房水の通りが悪くなった線維柱帯(フィルターの役割を果たす組織)を切り開いて通りをよくする手術です。白内障手術と同時に行うこともできます。

期待できる効果

目詰まりした線維柱帯が切り開かれることで房水が流れやすくなり、眼圧が低下します。手術の影響で術後一時的に眼圧が上昇することがありますが、ごく一部の場合を除き徐々に眼圧が低下していきます。

特徴

手術時間は10分程度で、2mm程度の小さな切開創から行う負担の少ない手術です。切開創が小さいためほとんどの症例で手術後の縫合が不要です。(閉じが悪い場合は縫合することもあります)
目の中を一部切り開くため必ず出血があり、手術直後は出血の影響で一時的に見え方が低下します。出血はおよそ1週間で吸収され、見え方も戻りますので安心してください。(緑内障の影響で失った視野はこの手術をしても回復しません)

手術後2週間程度、出血や炎症の影響で白目が真っ赤になりますがこちらも自然と治まるので心配はいりません。


線維柱帯切除術
(トラベクレクトミー)

結膜(白目)の下に穴を開けることで房水の通り道を新しく作る手術です。大きな眼圧低下効果が期待できますが眼圧の調整が難しい手術です。

期待できる効果

新しく房水の通り道を作るため、大きく眼圧を下げることができます。また、日内変動(1日の中で起こる眼圧の上下の変化)が少なくなるという報告もあります。

特徴

この方法の最大の強みでる眼圧を下げる効果が強い、という特徴に加えて術式や薬剤の進歩で手術成績が飛躍的に向上している手術です。長い間眼圧のコントロールができているという報告が多数あがっています。

当院の特徴

適切な時期に適切な治療の選択

これまでに数多くの緑内障手術を実施してきた経験から「患者さんの状態に応じた最適な手術の選択」、「将来を考えた手術方法の選択」を行います。

患者さんの状態に応じた最適な手術の選択

緑内障の手術はご紹介した通りいくつかの種類があり、期待できる効果や体への負担が異なるため、「患者さんに合った最適な手術を選択することが重要」となります。
当院の院長は長年基幹病院の眼科責任者を務めていましたので近隣クリニックからご紹介いただいた多数の緑内障の手術を行ってきており、その経験から患者さんお一人お一人の眼圧や視野の状態に合った手術を選択することができます。

将来を考えた手術方法の選択

緑内障の治療では生涯に渡って患者さんの視野を守るため、以前に行った手術の効果が低下してきた際に違う種類の緑内障手術を追加していくことが珍しくありません。(何人かのランナーが“たすき”を繋ぐ駅伝のようなイメージです)
例えばトラベクロトミーを行う際に、将来トラベクレクトミーが必要になりそうだと判断した場合はレクトミー手術ができる場所を残すために、通常行わない難しい方向から手術を行うことがあります。こうすることでその方が将来トラベクレクトミーが必要になった際も対応できるようになります。同じ手術でも難度が上がり、技術が必要となるのですが患者さんの将来まで考えてより良い選択を行うようにしています。

積極的な低侵襲手術の選択

治療のためとは言え、手術を行うと体に負担がかかります。当院ではできるだけ体への負担が小さな(低侵襲)手術を選択するように心がけています。緑内障治療においては積極的にiStentを活用しております。低侵襲な手術を行うために、当院は積極的に新たな術式や医療機器の情報収集を行い、技術の研鑽を積む努力を続けています。これからも医療技術の進歩を取り入れ治癒だけを目的とするのではなく、患者さんにとって負担の少ない手術を選択できるよう邁進します。