子供は視機能の発達段階であり、目の成長にとって非常に重要な時期です。
しかし、子供は症状があってもうまく表現できなかったり、それが普通と感じてしまって症状に気づかないこともあります。
そのためちょっとした違和感でも早めに眼科で検査を受けることが重要です。

一般眼科診療

子供は大人に比べて免疫機能が未発達なため感染症にかかりやすかったり、ボールなどがぶつかって目のケガをするなど様々なリスクを抱えています。

自然と治癒するものであれば問題ありませんが、見え方に異常が出ていることもありますので気になる違和感がある場合は早めに検査を受けることをお勧めします。

気になる症状の例

  • 目ヤニが出ている
  • 目の周りが腫れている、赤みがかっている
  • テレビや本の距離が近い
  • 何かを見る時に目を細めている
  • 涙の量が多い、涙目が続く
  • 両目の視線が合わない
  • 瞳孔が白く見える

弱視治療

弱視とは視機能が発達していない状態のことで、メガネやコンタクトレンズを使用しても視力がでない状態のことです。
視機能が発達する時期は限られていますのでその時期に治療を行わないと生涯にわたって見えづらい状態が続きます。

視力と視機能の発達イメージ

子供は生まれた時はほとんど見えておらず、その後徐々に視機能が発達し視力がでるようになります。
視機能が発達するためには網膜にピントが合った像が映ることが必要なのですが、遠視や乱視があるとピントが合った像が映らず視機能が発達しません。

弱視の治療方法

弱視治療の最大の目的は、網膜にピントが合った像を映して視機能を成長させることです。
一般的には視機能の感受性が高い6歳頃までに治療を完了させる必要があると言われていますが、実際には8歳~9歳でも治療の効果があったケースが報告されています。
できるだけ早期に治療を開始する方が好ましいですが、年齢だけであきらめず治療をがんばりましょう。

弱視治療の基本

メガネ装用

メガネを装着することでピントを網膜に合わせます。朝起きた時から寝る時まで起きている間中メガネをかけましょう。最初の内はメガネを嫌がる子供もいますが、視機能が発達するにつれメガネをしていた方がよく見えるようになるのでメガネを嫌がらないようになります。

左右差がある場合

片方の目の成長が遅れている場合は良い方の目をアイパッチで遮蔽して悪い方の目の成長を促します。どの程度遮蔽するかは年齢や視力により異なり、同じ視力でも年齢が低ければ遮蔽する時間や期間が短くなります。

弱視の検査

子供は調節力が強いため通常の状態で視力検査をしても正確な検査ができません。そのため調節力を麻痺させる点眼を使用して検査を行います。使用する点眼によっては検査後も効果が残り、数日間眩しく感じることがありますが自然と治まりますので心配はいりません。

3歳児検診

3歳児健診では体や心の発達の遅れが無いか、視力・聴力の異常が無いかを確認します。中でも視力は3歳頃までに急速に成長して6~8歳で完成し、生涯の視力が決まってしまうため、この時期に検査を行うことに重要な意味があります。

3歳児健診で眼科は何を検査しているの?

視力を測ることで視機能の発達の状況を確認しています。視機能の発達が遅れている状態を「弱視」と言います。この弱視は治療できる期間が限られており、治療開始が早い方が治療効果が期待できる病気です。
そのため、この検査で「3歳児精密検査受診票」を受け取ったら眼科で検査を受けるようにしましょう。この時期を逃すと次に見つかるのは就学時健診になり治療開始が遅くなりますので、この3歳児健診でしっかりと検査をするようにしましょう。

学校検診

学校健診では学校生活を送る上で視力が問題無いか確認するために実施されています。そのため眼科で行う視力検査とは異なり、370方式と言われる方法でA,B,C,Dの4段階で評価されます。

A(1.0以上) 教室の一番後ろからでも黒板の文字がよく見える
B(0.7~0.9) 教室の後ろの方でも黒板の文字はほとんど読める
C(0.3~0.6) 教室の後ろの方では黒板の文字が見えづらい
D(0.2以下) 前の方でも見え方が十分ではない

子供は視力が変動しやすく、気づかぬ内に近視が進行していることもありますのでA以外の結果をもらった場合は早めに眼科を受診しましょう。
「メガネをかけると近視が進む」と勘違いされている方もいらっしゃいますが、メガネの有無に関わらず近視は進行します。文字が見えづらい状態では学習効果に影響がでますのでメガネを使用してよく見える状態にしてあげましょう。

眼科での検査

小さな子供は調節力が強いため、単に視力検査を行っても正しい結果が出ない場合があります。その場合、調節を一時的に麻痺させる点眼を使用して正確な視力を測ります。また、単に視力以外に他の病気が見つかることもありますのでお子様が紙をもらってきた場合はお早目にご相談ください。

近視進行抑制治療

一般的に目が悪くなる、視力が悪くなる、と言われる状態を近視と言います。
近視は眼球の奥行(眼軸長)が長くなることで、外から入った光の焦点が網膜の手前で合ってしまう状態のことで、目の構造が問題です。
眼軸長は身長の伸びと相関性があり、体が大きくなるにつれて眼軸長が伸びることで近視が進行していきます。

一度進行してしまった近視は回復させることができず、視力を回復させるためには、角膜を削るレーシックや、レンズを目の中に挿入するICLという治療を行わなければいけません。しかし、近視が進行している子どもの内であれば、治療をすることで進行を抑制させられることがわかっています。

当院では近視の進行を抑制する点眼治療を実施しています。

点眼による近視進行抑制治療

目の遠近調節機能に作用するアトロピンという薬剤を0.01%配合した点眼を寝る前に使用することで、近視の進行が遅くなることがわかっています。

シンガポール国立大学の臨床試験で、0.01%アトロピンの近視抑制効果が証明されています。
Ophthalmology2012;119(2):347-54

点眼を寝る前にさした場合と、薬効成分が無い点眼をさした目を比較した結果、上のグラフのように、薬効成分が含まれた点眼を使用したグループでは近視の進行が抑制されることがわかりました。
継続的に使用することで効果が期待できますので、まずは2年間を目安に治療を継続することをお勧めします。

治療の費用について

この治療は今のところ保険収載されておらず、全額自費での治療となります。当院はクリーンベンチという無菌環境で調剤できる設備を用いて調剤しているため、以下の費用としております。
設備費用はかかるのですが、大切な子どもの目を守るため必要な設備だと考えております。(通常環境での調剤は雑菌混入のリスクがあるため)

診察料(検査含む) 3,000円
点眼(1本) 2,500円(1本で1ヶ月分)
一度の診察で3本まで購入できます。

近視は視力が低下しているだけでは無く、網膜裂孔や緑内障など他の病気の発生要因となります。子どもの間に進行抑制の治療をしてあげることをお勧めします。