咽頭結膜熱
現在福岡県内で咽頭結膜熱が流行しています。

上のグラフは福岡県内の咽頭結膜熱の定点観測(指定された医療機関からの報告数)で、今年(赤い線)は例年より8月ごろから急激に感染者が増えていることがわかります。

上の地図は県内での咽頭結膜熱の発生の多い地区です。
上記のグラフと地図は県の感染症情報サイトから転記しました。
咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因の、咽喉の炎症や結膜炎を症状とする感染症です。
アデノウイルスには51種類の血清型があり、それらはA~Fの6つの種に分類されます。
そのうちアデノウイルスB種、血清型の3型が咽頭結膜熱の原因と考えられています。
その他4型、7型、2型、11型でも同様の症状を引き起こすことがあると報告されています。
定点把握の対象疾患で、全国で指定された小児科から保健所→都道府県→厚生労働省と発生動向が報告されます。
届け出のために必要な臨床症状は①発熱②咽頭発赤③結膜充血の3つの症状を満たす必要があります。
咽頭のぬぐい液でアデノウイルスの抗体検査ができます。
似たような疾患に流行性角結膜炎、いわゆる流行り目という病気がありこちらは眼科での定点把握疾患になります。
こちらもアデノウイルスが原因の病気ですが、血清型が異なりD種、8型、37型、53型、54型、56型が原因と考えられています。
届け出のために必要な臨床症状は、急性の濾胞性の結膜炎に耳前リンパ節の腫脹や角膜混濁、結膜偽膜などの所見が認められ、検査所見として涙液や眼脂でウイルスの抗原検査やPCR検査で陽性になった場合です。
どちらもアデノウイルスが原因ですが、迅速診断キットではどちらもアデノウイルスが陽性か陰性かしか判別できませんので血清型まではわかりません。
臨床所見より感冒症状、所見が強いか、眼症状、所見が強いかでどちらかに診断することになります。
いずれにしろアデノウイルスは感染力が強く、咽頭結膜熱は塩素濃度が低いプールで流行したことからもわかるように別名プール熱の呼び名があり、強い感染力が示唆されます。
流行性角結膜炎は涙や目やにから人に感染していきます。
こちらも非常に感染力が強いので、手洗いや触れた場所の消毒が重要になってきます。
アデノウイルスに特異的に効果があるお薬は現時点ではなく、対処療法的に経過を見ていくことになります。
流行性角結膜炎では角膜に濁りができたり、結膜に偽膜を形成して目に傷が入ることがあります。
症状の緩和と二次感染予防目的でステロイド点眼と抗生物質の点眼を使用します。
上記のような症状がある方は早めに医療機関の受診をお勧めします。
文責
福岡市博多区東雲町 西鉄桜並木駅前
よしやま眼科院長 眼科専門医 吉山慶三