コラム 更新日: 2023/9/11

白内障手術で使う眼内レンズとはどのようなものでしょうか?

眼科に来て白内障手術をするときになって初めてそのようなものがあると知られる方も多いと思います。

眼内レンズとは下の写真のような形をした全長10数ミリ程度の人工のレンズになります。

第2次大戦中に飛行機の風防がパイロットの目の中に飛入し、あまり炎症が起きなかったことから風防の素材であるPMMAが初期の眼内レンズの素材として選択されました。

しかしPMMAは非常に硬い素材で折り曲げることができず、眼内に挿入するときは眼球の切開幅が大きくなるという欠点がありました。

そのため切開創を小さくするために折りたためるやわらかい素材の開発が進みました。

現在はアクリル素材で作られることが一般的です。

アクリル素材だと折りたたむことができるため切開創を小さくすることができます。

PMMAの時は6mm以上切開していましたが、現在の眼内レンズは1.8mmの切開で挿入できるものも開発されています。

6mmだとごくわずかだと思われるかもしれませんが、眼球の直径が24mm程度、角膜の大きさは10mm程度ですので眼球の約1/4、角膜周囲の半分の範囲を切り開くことになり、目にとっては大きな侵襲になります。

また創が大きく縫合が必要なため、術後の乱視などの問題も発生します。

比べて2mm程度の切開は非常に小さく、創の強度や感染のリスクなどに有利に働きます。

手術を行う身としては、やはりアクリルによる小切開手術は手術が相当楽になりました。

以前のPMMAレンズの挿入は傷口も大きくなるし硬くて大きなレンズを入れるのにも一苦労しますし、また入れた後も傷口を縫合しなければならず、術者として大きなストレスでした。

現在のレンズは本当に小さな創から入れることができ、またレンズ自体も柔らかいので虹彩や角膜を傷つける危険性が少なく、ストレスなくレンズを入れて固定することができます。

白内障手術の基本的な原理や方法は1970年代から変わっていませんが、機械や使用するデバイス、材料が進歩し、現代では非常に洗練され完成された術式の一つになっています。

文責 福岡市博多区東雲町 よしやま眼科院長 眼科専門医 吉山慶三